
通販サイトを公開したものの、思っていたようにアクセスは増えませんでした。毎日のようにアクセス解析を開いては、「今日は何人くらい見てくださっているかな」と期待するのですが、結果はいつも似たようなものです。イベントでは目の前のお客様に商品をご紹介できますが、ホームページは見つけてもらえなければ存在していないのと同じです。「ホームページを作れば売れる」という考えは、公開して間もなく消えていきました。ホームページを作ることよりも、まず知っていただくことの方が、ずっと難しかったのです。
そこで始めたのがブログでした。当時は今ほどSNSが当たり前ではなく、小さなお店が継続して情報を発信できる場所は限られていました。商品ページだけでは伝えきれないことを書けば、それがホームページを知っていただくきっかけになるかもしれない。そんな期待もありましたし、イベントでお客様とお話ししていると、「そんなことまで考えて作っているんですね」と驚かれることが何度もあったので、その会話をホームページでも伝えられたらという思いもありました。仕事が終わってから記事を書き、公開してはまた次の記事を書く。最初の頃は、そんな毎日だったように思います。
思っていたほど甘くはありませんでした
ところが、ブログを書き始めたからといって状況はほとんど変わりませんでした。記事を一本書いてもアクセスは増えません。十本書いても、二十本書いても同じです。「ブログを書けば検索される」というイメージをどこかで持っていましたが、現実はそんなに甘くありませんでした。仕事が終わってから記事を書き、翌日にアクセス解析を見る。その繰り返しです。「この時間を別の仕事に使った方がいいのではないか」と思ったことも、一度や二度ではありませんでした。
それでもブログをやめようとは思いませんでした。商品の説明や価格はホームページに書けますが、それだけでは伝えられないことがあまりにも多かったからです。どうしてこの商品を作っているのか。どんなことを大切にして仕事をしているのか。お客様からどんな質問をいただくことが多いのか。そうしたことは商品ページには書きにくくても、ブログなら伝えることができます。すぐに売上へつながらなくても、いつか誰かに読んでいただけるかもしれない。そんな気持ちで書き続けていました。
ある日、少しだけ様子が違いました
その頃になると、朝一番にアクセス解析を開くことが習慣になっていました。「今日はどうだろう」と思いながら数字を確認するのですが、大きく変わる日はほとんどありません。それでも毎日見てしまうのは、もしかしたら今日は何か変わっているかもしれないという期待が、どこかに残っていたからです。
そんなある日、一つだけアクセスが増えている記事がありました。「やっと来たか」と思いました。時間をかけて書いた記事がようやく検索で評価されたのだろう。そう思いながら記事を開いた瞬間、「あれ?」と首をかしげました。
表示されていたのは、ホームページ制作でも通販サイトでもありません。仕事をしている私たちには当たり前すぎて、「こんな専門的な内容を検索する人なんているのだろうか」と思いながら公開した記事だったのです。最初は何かの間違いだろうと思いました。ところが翌日も、その記事は読まれています。数日後には別の記事も少しずつアクセスが増え始めました。しかも共通していたのは、どれも私たちが「これは読まれないだろう」と思っていた記事ばかりだったことです。
その頃から、アクセス数だけではなく、検索キーワードを見る時間が増えていきました。「どんな言葉でホームページまで来てくださったのだろう」と思いながら毎日見ていると、少しずつ共通点が見えてきます。私たちが読んでほしいと思って書いた記事ではなく、お客様からよくいただく質問や、仕事では当たり前になっている専門的な内容の記事ばかりが読まれていたのです。
そこで初めて、「もしかすると、お客様が知りたいことと、私たちが伝えたいことは違うのかもしれない」と思うようになりました。
読まれていたのは、思ってもいなかった記事でした
最初は本当に偶然だと思っていました。一つの記事だけたまたま検索されたのだろう。そのうち元に戻るだろう。そのくらいにしか考えていなかったのですが、ブログを書き続けていると同じようなことが何度も起こります。狙って書いた記事ではなく、仕事の中では当たり前だと思っていたことや、お客様からいただいた質問を書いた記事の方が、少しずつ検索から読まれるようになっていったのです。
毎日仕事をしていると、自分たちにとっての「当たり前」が増えていきます。だから、「こんなことを書いても役に立たないだろう」と思っていたことでも、初めてその商品を知る方にとっては新しい情報だったのでしょう。私たちには専門知識でも、お客様にとっては知りたい情報だった。そのことに気付いてからは、ブログを書くときの考え方が少しずつ変わっていきました。
それまでは「検索されそうな記事を書こう」と考えていましたが、それよりも「ホームページでは書ききれないことを書こう」と思うようになりました。商品ページには商品の説明や価格、仕様を載せることはできます。でも、なぜその商品を作っているのか、どんな考えで仕事をしているのか、どうしてその方法を選んでいるのかまでは書ききれません。そうした話はブログだからこそ、時間をかけて伝えることができました。
しばらくすると、お客様から思いがけない言葉をいただくようになります。「ブログを読んでいたので安心して購入できました。」ホームページだけをご覧になっていると思っていたので、その言葉はとても印象に残っています。商品を比較して選ぶだけであれば、ブログを読む必要はありません。それでも時間をかけて記事を読んでくださり、私たちの仕事や考え方を知った上でご注文いただけたことは、とてもうれしい出来事でした。
さらに後になって、取材のお話をいただいたときにも、「ブログまで読ませていただきました」と言われたことがあります。ホームページだけでは分からなかった会社の雰囲気や考え方が、ブログを読むことで伝わったというのです。そのとき改めて感じたのは、ブログはアクセスを集めるためだけのものではないということでした。私たちのことを知っていただき、安心していただくための場所でもあったのです。
今振り返ってみると、10年間ブログを書き続けてきて、マイナスになったことは一つもありません。
「ブログを読んだからお願いしようと思いました。」
「ブログまで読ませていただきました。」
あの頃は、アクセスが増えるかどうかだけを気にしていました。でも10年続けて分かったブログの本当の価値は、数字ではなく、私たちのことを知っていただき、安心していただける場所だったということです。
次回予告
ホームページは、一度公開すれば完成するものだと思っていました。しかし実際には、お客様の反応を見ながら少しずつ改善を重ねていくことで、本当の意味で育っていくものだったのです。
次回は、「ホームページは完成しない。育て続けることで見えてきたこと」をお話ししたいと思います。